1.就学支援の改革

群馬大学教育学部 久田信行

(注) この記事では書いていない「認定特別支援学校就学者」については文末の続編 をご覧ください)

 就学指導のあり方を大きく変える制度改革が始まりました。「学校教育法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定され、平成25826日公布、91日に都道府県教育委員会等へ通知されました。

通知の改正の趣旨には、

今回の学校教育法施行令の改正は、平成247月に公表された中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」(以下「報告」という。)において、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。」との提言がなされたこと等を踏まえ、所要の改正を行うものであること。

と書かれています。

ここに書かれている「報告」(以下ここでは「インクルーシブ教育システム(報告)」と略記)は、障害者の権利条約 (国連 障害者の権利に関する条約) 批准のため、教育制度を改革する処方箋(今後の改革の指針)と言って良いでしょう。この文書の内容は、筆者の全体的な印象としては、それほど大きな改革になっていないと思っています。しかし、将来の改革の方向へやっと進み始めたとは言えるでしょう。現実的な義務を果たさなければならない行政としては、すぐに二階へ行けないので、中二階、いや階段の踊り場で踏みとどまっている様な印象です。この「改革」を階段として使い、二階へ行けるように努力しなければならない状況だと思います。

国連 障害者の権利に関する条約は、恐らく来年、2014年に国会で批准する計画だそうです。批准すると憲法と法律の間に位置づけられ、必要なら教育基本法の改定さえ必要とするような、法律上で重要な位置を占めます。そこで、批准するためには国内の法律や制度を改定しなければならないのです。条約の基本は、@ 福祉を施す対象としての障害者ではなく、人権の主体として、障害者の尊厳が尊重されなければならないということが主旨で、国民全てと同じ人権をどう実現するかが求められています。また、A 教育についてはインクルージョンが基本です。

特別支援教育は、改訂作業の時期に文部大臣が国会で答弁していたように、明らかにインクルージョンの考え方の影響を受けています。特別支援教育への改革はこの条約の精神(ノーマライゼーション)への対応と考えた方が、特別支援教育そのものの理解にとっても望ましいのではないかと考えています。

権利条約の理解が前提にないと、改革の方向が見えなくなるので、基本は、障害者の権利条約の精神が示している方向性を吟味することが、現状での改革の本質を吟味する事に役に立つと思います。そういう前提の基で、ここでは、今の話題として、就学支援のあり方がどう変わるかという問題について述べます。

 

2.就学支援のあり方はどう変わるのか?

 就学指導のあり方に関する具体的論議は、5年前から論議され「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」(平成20 年7月〜223月)で、今日の方策の骨子が提案されました。この協力者会議の報告書では、図−1のように旧就学指導委員会方式の就学指導をまとめ、図−2のような改定案を報告しました。(図−2には就学基準の記載がない点に注目)

















図−1 旧就学指導委員会方式の就学指導
















 

















図−2 調査研究協力者会議(平成22年)段階での改革案

















 その論議を基本として、昨年出された「インクルーシブ教育システム(報告)」の案が作成され、それは図−3に示すように、就学基準が入っている形に書き改められたのです。

 具体的になっているのは、現実の就学支援を想定して、何らかの基準が無いと各市町村での作業が出来ない等、いろいろと検討した結果なのでしょうが、果たして権利条約の内容に抵触しないか,ちょっと心配なところではあります。

 図−2、3の下の方に「個別の教育支援計画の作成・活用」という大きな矢印があります。これが、今回の改訂の目玉で、幼稚園、保育所、障害児施設、地域での子育て支援等の情報を集約し、保護者の意見を充分に聴いて、市町村教育委員会が「個別の教育支援計画」(移行支援計画だが)を作成し、その計画を総合的に判断して就学先を説明と合意(インフォームドコンセント)に充分配慮しながら決定していくというプランです。

 このとき、従来の「就学基準」は、「個別の教育支援計画」の作成が必須の対象範囲を示す基準となり、直接就学先を決定するための基準にはしていませんよ、つまり、「障害のある人が障害を理由として一般教育制度から排除されない」制度ですよ、という論理なのです。

 そうなると、市町村の多くは特別支援教育が専門の指導主事がいるとは限らないし、いても人数が足りないので、「個別の教育支援計画」の作成に、どうしても市町村立の小中学校の特別支援教育を担当している先生方の協力を仰がざるを得なくなると想像しています。

 今どき、障害者の権利条約について勉強していない親の会は無いので、保護者の皆さんは、インクルーシブ教育や合理的配慮等々の考え方を知っている可能性が高くなります。また、マスコミの報道で、就学先決定において保護者の意見が尊重されるという記事に接しているわけで、面談をする先生方が、知らなかったら、一遍に信用を無くし、その後の話し合いがスムーズに行かなくなる恐れもあります。














図−3 「インクルーシブ教育システム(報告)」での案

















3.基礎知識

 今回の制度改革に直接関連する文書の内容をまとめることにします。

 「インクルーシブ教育システム(報告)」では、改革の方策として以下のようにまとめられています。この記述の方が、201391日の通知よりも分かりやすいと思います。

○子ども一人一人の教育的ニーズに応じた支援を保障するためには、乳幼児期を含め早期からの教育相談や就学相談を行うことにより、本人・保護者に十分な情報を提供するとともに、幼稚園等において、保護者を含め関係者が教育的ニーズと必要な支援について共通理解を深めることにより、保護者の障害受容につなげ、その後の円滑な支援にもつなげていくことが重要である。また、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図っていくことが重要である。

○乳児期から幼児期にかけて、子どもが専門的な教育相談・支援が受けられる体制を医療、保健、福祉等との連携の下に早急に確立することが必要であり、それにより、高い教育効果が期待できる。

○就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。その際、市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である。

○現在、多くの市町村教育委員会に設置されている「就学指導委員会」については、早期からの教育相談・支援や就学先決定時のみならず、その後の一貫した支援についても助言を行うという観点から、「教育支援委員会」(仮称)といった名称とすることが適当である。「教育支援委員会」(仮称)については、機能を拡充し、一貫した支援を目指す上で重要な役割を果たすことが期待される。

○就学時に決定した「学びの場」は固定したものではなく、それぞれの児童生徒の発達の程度、適応の状況等を勘案しながら柔軟に転学ができることを、すべての関係者の共通理解とすることが重要である。

○就学相談の初期の段階で、就学先決定についての手続の流れや就学先決定後も柔軟に転学できることなどについて、本人・保護者にあらかじめ説明を行うことが必要である(就学に関するガイダンス)。

○本人・保護者と市町村教育委員会、学校等の意見が一致しない場合については、例えば、本人・保護者の要望を受けた市町村教育委員会からの依頼に基づき、都道府県教育委員会が、市町村教育委員会への指導・助言の一環として、都道府県教育委員会の「教育支援委員会」(仮称)に第三者的な有識者を加えて活用することも考えられる。

○可能な限り早期から成人に至るまでの一貫した指導・支援ができるように、子どもの成長記録や指導内容等に関する情報を、その扱いに留意しつつ、必要に応じて関係機関が共有し活用することが必要である。

○都道府県教育委員会の就学先決定に関わる相談・助言機能を強化する必要がある。

○就学相談については、それぞれの自治体の努力に任せるだけでは限界があることから、国において、何らかのモデル的な取組を示すとともに、具体例の共有化を進めることが必要である。

 これらの文言の内、

○就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。その際、市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である。

という部分が中核で、

@    従来の就学基準によって特別支援学校への就学を決めるという原則を改める。

A    障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとする(具体的には図−3のように、個別の教育支援計画を作成し、総合的に判断して就学先を決める。)

B    最終的には市町村教委が決定する。

ということです。

 このような改定の基礎には、障害者の権利条約の第24条(教育)で、第2 (a)  「障害のある人が障害を理由として一般教育制度から排除されないこと、並びに障害のある子どもが障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育又は中等教育から排除されないこと。」があると紹介されることが多い。それは正しいのだが、第2項は、そもそも第1項の目的を実現するための手段を示している部分なので、第1項が前提となります。

1項は次のように書かれています。

1 締約国は、教育についての障害のある人の権利を認める。この権利を差別なしにかつ機会の平等を基礎として実現するため、締約国は、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育制度及び生涯学習であって、次のことに向けられたものを確保する。

 言い換えると、“幼稚園から大学院まで、あらゆる段階でのインクルーシブ教育と生涯教育を、障害のある人の人権を尊重する方向で確保する”と言って良いのではないでしょうか。24を巻末にあげていますの、是非ご覧ください。

 前述の第2項の(a)の「障害を理由として」が、「就学基準」によって就学先を決定することは、障害を理由とする決定になり、障害者の権利条約に抵触するとして、平成22年の改正案が出来たのです。しかし、今回の改訂では、「就学基準」が復活し、決定理由が「個別の教育支援計画」の総合的判断なのだから条約に抵触しないという解釈なのだろうと推察されます。

 調査研究協力者会議の報告でも、条約に抵触しないように、就学基準を隠しただけで、実質は大きな改革ではないと思っていましたが、平成24年の「インクルーシブ教育システム(報告)」では後退している様に思われます。

 また、「インクルーシブ教育システム(報告)」では、最終決定は市町村教育委員会とされており、新聞報道のように本人および保護者の意向は重視されるとはいえ、決定権をもつという位置づけではありません。

 とはいえ、新聞報道のように誤解されると、就学時の決定のあり方が徐々に変わって来る可能性があるので、半歩前進ではあるのかもしれません。

 

 

4.補遺 第8条

「インクルーシブ教育システム(報告)」で、面白いことに権利条約第8条が以下のように紹介されています。

 障害者の権利に関する条約第8条には、障害者に関する社会全体の意識を向上させる必要性が示され、教育制度のすべての段階において障害者の権利を尊重する態度を育成することが規定されている。こうした規定を踏まえれば、学校教育において、障害のある人と障害のない人が触れ合い、交流していくという機会を増やしていくことが、特に重要であり、障害のある人と触れ合うことは、共生社会の形成に向けて望ましい経験となる。

 もう一歩、人権教育として道徳の時間などに、人権の主体としての障害者に関する認識を高め、全ての児童・生徒の意識向上を図るため、教員の研修を含め、具体的な指導体制を確立する。などという文言が入っていると良かったのだが・・・。と思ってしまいました。(詳しくは巻末資料3

 


注) この記事では書いていない「認定特別支援学校就学者」については以下の続編 をご覧ください。  

障害のある児童生徒等の就学手続の改正

−パブリックコメントと施行令で新に加わった「認定特別支援学校就学者」とはなに?

  この解説と上記の記事を合わせて整理したものを解説記事3として掲載しました。            どちらもここからリンク

資料集

資料1 障害者の権利条約 第24条 教育

1 締約国は、教育についての障害のある人の権利を認める。この権利を差別なしにかつ機会の平等を基礎として実現するため、締約国は、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育制度及び生涯学習であって、次のことに向けられたものを確保する。

(a)  人間の潜在能力並びに尊厳及び自己価値に対する意識を十分に開発すること、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。

(b)  障害のある人が、その人格、才能、創造力並びに精神的及び身体的な能力を最大限度まで発達させること。

(c)  障害のある人が、自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。

2 この権利を実現するため、締約国は、次のことを確保する。

(a)  障害のある人が障害を理由として一般教育制度から排除されないこと、並びに障害のある子どもが障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育又は中等教育から排除されないこと。

(b)  障害のある人が、自己の住む地域社会において、他の者との平等を基礎として、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすることができること。

(c)  個人の必要に応じて合理的配慮が行われること。

(d)  障害のある人が、その効果的な教育を容易にするために必要とする支援を一般教育制度内で受けること。

(e)  完全なインクルージョンという目標に則して、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境において、効果的で個別化された支援措置が提供されること。

3 締約国は、障害のある人が地域社会の構成員として教育に完全かつ平等に参加することを容易にするための生活技能及び社会性の発達技能を習得することを可能としなければならない。このため、締約国は、次のことを含む適切な措置をとる。

(a)  点字、代替的筆記文字、拡大・代替コミュニケーションの様式、手段及び形態、並びに歩行技能の習得を容易にすること、並びにピア・サポート及びピア・メンタリングを容易にすること。

(b)  手話の習得及びろう社会の言語的なアイデンティティの促進を容易にすること。

(c)  盲、ろう又は盲ろうの人(特に子ども)の教育が、その個人にとって最も適切な言語並びにコミュニケーションの様式及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保すること。(以下略)

川島聡=長瀬修 仮訳(2008530日付)より

 


 

資料2 学校教育法施行令の一部改正について(通知)

25文科初第655号 平成2591

 (宛先省略)

文部科学事務次官      山中 伸一

学校教育法施行令の一部改正について(通知)

 このたび、別添のとおり、「学校教育法施行令の一部を改正する政令」(以下「改正令」という。)が閣議決定され、平成25826日付けをもって政令第244号として公布されました。その改正の趣旨及び内容等は下記のとおりですので、十分に御了知の上、適切に対処くださるようお願いします。

 また、各都道府県教育委員会におかれては所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して、各指定都市教育委員会におかれては所管の学校に対して、各都道府県知事及び構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては所轄の学校及び学校法人等に対して、各国立大学法人学長におかれては附属学校に対して、改正の趣旨及び内容等について周知を図るとともに、必要な指導、助言又は援助をお願いします。

1 改正の趣旨

 今回の学校教育法施行令の改正は、平成247月に公表された中央教育審議会初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」(以下「報告」という。)において、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。」との提言がなされたこと等を踏まえ、所要の改正を行うものであること。

なお、報告においては、「その際、市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である。」との指摘がなされており、この点は、改正令における基本的な前提として位置付けられるものであること。

2 改正の内容

 視覚障害者等(視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)で、その障害が、学校教育法施行令第22条の3の表に規定する程度のものをいう。以下同じ。)の就学に関する手続について、以下の規定の整備を行うこと。

1 就学先を決定する仕組みの改正(第5条及び第11条関係)

  市町村の教育委員会は、就学予定者のうち、認定特別支援学校就学者(視覚障害者等のうち、当該市町村の教育委員会が、その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、その住所の存する都道府県の設置する特別支援学校に就学させることが適当であると認める者をいう。以下同じ。)以外の者について、その保護者に対し、翌学年の初めから2月前までに、小学校又は中学校の入学期日を通知しなければならないとすること。

 また、市町村の教育委員会は、就学予定者のうち認定特別支援学校就学者について、都道府県の教育委員会に対し、翌学年の初めから3月前までに、その氏名及び特別支援学校に就学させるべき旨を通知しなければならないとすること。

2 障害の状態等の変化を踏まえた転学(第6条の3及び第12条の2関係)

 特別支援学校・小中学校間の転学について、その者の障害の状態の変化のみならず、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情の変化によっても転学の検討を開始できるよう、規定の整備を行うこと。

3 視覚障害者等による区域外就学等(第9条、第10条、第17条及び第18条関係)

 視覚障害者等である児童生徒等をその住所の存する市町村の設置する小中学校以外の小学校、中学校又は中等教育学校に就学させようとする場合等の規定を整備すること。

 また、視覚障害者等である児童生徒等をその住所の存する都道府県の設置する特別支援学校以外の特別支援学校に就学させようとする場合等の規定を整備すること。

4 保護者及び専門家からの意見聴取の機会の拡大(第18条の2関係)

   市町村の教育委員会は、児童生徒等のうち視覚障害者等について、小学校、中学校又は特別支援学校への就学又は転学に係る通知をしようとするときは、その保護者及び教育学、医学、心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くものとすること。

5 施行期日(附則関係)

 改正令は、平成2591日から施行すること。

3 留意事項

1 平成237月に改正された障害者基本法第16条においては、障害者の教育に関する以下の規定が置かれているところであり、障害のある児童生徒等の就学に関する手続については、これらの規定を踏まえて対応する必要があること。特に、改正後の学校教育法施行令第18条の2に基づく意見の聴取は、市町村の教育委員会において、当該視覚障害者等が認定特別支援学校就学者に当たるかどうかを判断する前に十分な時間的余裕をもって行うものとし、保護者の意見については、可能な限りその意向を尊重しなければならないこと。

【参考:障害者基本法(抄)】

(教育)第16条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。

3 国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。

4 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、適切な教材等の提供、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない。

2 以上のほか、障害のある児童生徒等の就学に関する手続に関しては、報告において、「現在、多くの市町村教育委員会に設置されている「就学指導委員会」については、早期からの教育相談・支援や就学先決定時のみならず、その後の一貫した支援についても助言を行うという観点から、「教育支援委員会」(仮称)といった名称とすることが適当である。」との提言がなされており、この点についても留意する必要があること。

お問合せ先 特別支援教育課 企画調査係


 

資料3 障害者の権利条約 第条 意識向上

 障害者の権利について国民の意識を向上させるため、報道機関のあり方や教育における積極的な取り組みを求めています。

8条 意識向上

1 締約国は、次のための即時的、効果的かつ適切な措置をとることを約束する。

(a)  障害のある人の置かれた状況に対する社会全体(家族を含む。)の意識の向上、並びに障害のある人の権利及び尊厳に対する尊重の促進

(b)  あらゆる生活領域における障害のある人に対する固定観念、偏見及び有害慣行(性及び年齢を理由とするものを含む。)との闘い

(c)  障害のある人の能力及び貢献に対する意識の促進

2 このため、締約国が講ずる措置には、次のことを含む。

(a)  次のために、効果的な公衆啓発活動を開始し及び維持すること。

(i)  障害のある人の権利を受容する態度の育成

(ii)  障害のある人に対する肯定的認識及び一層高い社会的意識の促進

(iii) 障害のある人の技能、功績及び能力並びに職場及び労働市場への貢献に対する認識の促進

(b)  すべての段階の教育制度、特に幼年期からのすべての子どもの教育制度において、障害のある人の権利を尊重する態度を促進すること。

(c)  すべての媒体〔メディア〕機関が、この条約の目的に合致するように障害のある人を描写するよう奨励すること。

(d)  障害のある人及びその権利に対する意識を向上させるための訓練計画を促進すること。

川島聡=長瀬修 仮訳(2008530日付より

恐らく、「知らなかった」と驚かれた方も多いかと思います。筆者は、教育において最も意識的に取り組むべき課題は第8条だと思います。



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